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多岐な申請の種類 |
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「入管法」の実務上の運用につきましては、「施行規則」「省令」で細部が規定されていますが、今まで書いてきましたように、外国人の入国・在留に関する申請は、申請そのものにいくつかの種類があるのに加え、それぞれの申請はさらに在留資格の種類によっても、許可基準・条件・提出書類が異なります。そのため、入館手続きのすべてに精通することは、一般の方ではまず困難(「能力的に」というより「労力的に」)であり、企業の事務担当者が留学の手続きを覚えても仕方がないように、普通はすべてに精通する必要そのももがないといえます。 |
2. |
「許可することができる」申請手続き |
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許認可、届出などいわゆる行政手続は、それは多くの種類があり、それぞれ根拠法規に基づき、許可、不許可、受理、不受理などが決定されます。ここで注意いただきたいことは、その根拠法規の中で「許可しなければならない」と書いてあるものと「許可することができる」と書いてあるものがあることです。そして「入管法」では、更新や変更などの申請に関しては、それを「適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」と後者の立場に立っていることを、まず認識しなければなりません。「許可しなければならない」申請の場合、要件を満たしているのに不許可にすることはできませんが、「許可することのが出来る」申請は「外形的に条件を満たした書類を提出すれば当然に許可」ではないということです。 |
3. |
なぜ不許可? |
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申請が不許可になるということは、「あなたは今の状態では日本にいてはいけない人」という烙印を押されたことを意味します。日本での生活が人生の前提と考えている人にとってこれほどショックなことはありません。前に書いたように、「入管法」では更新や変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」としており、不許可ということは、裏返せば「更新や変更を適当と認めるに足りる相当の理由がない」ということになり、不許可通知書にも同様の記載がなされます。しかし、不許可の心当りがないときは、「理由がないとはどういうことか」と釈然としない人が多いと思います。通常、不許可原因は入国管理局で教えてくれますし、やり直しが利く場合も多くありますから、すぐあきらめる必要ありません。まずは、不許可原因を確認することが先決です。不許可原因はいくつかありますが、だいたい次のような場合が多いようです。ひとつは、基準適合性がない、つまり決められた条件のもともとあてはまらない場合、本人の過去の在留状況に問題ありの場合、受け入れ企業側に問題がありの場合、更には、申請内容に疑わしい部分がある、つまり書類の信憑性が低いという場合などです。 |
4. |
では次にどうする? |
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つまり、やり直しが効くのかどうかですが、これも入国管理局で不許可原因を聞く際に、相談に乗ってくれる場合もあります。基本的には、まず、上の基準適合性がない場合ですが、基準に適合しないのにいくら立派な書類を用意しても無理ですから、申請の基本方式を再考すべきでしょう。次に、過去の在留状況に問題ありの場合は、ケースバイケースですが、きちんとした書面でもって事業を説明し、その結果事業を斟酌される場合もあるようです。また受け入れ企業側に問題がありの場合、本人に非がなければ、別の受け入れ企業を探して再申請する場合はあります。
最後に、申請内容に疑わしい部分があった場合です。書類の偽造発覚は論外として、真正な書類を疑われ、心外この上ないという人も中にはいます。「疑わしきは罰せず」とは裁判の基本原理ですが、こと入管審査においては「疑わしきは許可せず」です。疑わしい事情があれば、適当と認めるに足りる相当の理由はないわけで、「入管側が偽物であることを立証できない以上は許可しろ」という理屈は通りません。「この書類が偽物だという証拠はあるか。」と言いたい気持ちはわかりますが、この場合は気を取り直して、内容が真正であることの挙証資料を充実させた上で、再申請できる場合が多くあります。 |